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ゴージャスな部屋にゴージャスな食事。そして、ゴージャスな値段。

エドワードにめろめろとなった大総統閣下が用意したのは、ロイが用意してくれたホテルより更にランクが上のホテル・・・そのVIPルームだった。

俺様だったらこのぐらいトーゼン!と内心ふんぞり返っていたエドワードであったが、それでも類い希なる演技力を発揮して”おどおどと萎縮する田舎出のおのぼりさん”を演じ、

弱々しいエンジュリックスマイルでもって、ホテルのオーナーをはじめとする従業員一同を陥落させた。

天蓋付きのキングサイズのベッドに寝転がり、エドワードはウェルカムフルーツの苺をぱくつきながら、大総統権限で与えられた錬金術の文献に片っ端から目を通していく。

ベッド近く(それでも随分離れている)のローテーブルには、これでもか!!!と言わんばかりの文献の山、山、山。

その3分の1が自称『エドワード・エルリックのパパ』のキング・ブラッドレイ印。残りはすべて、大総統閣下へ嫉妬の炎を燃やすロイ・マスタング印のものだった。

エドワードのために用意したホテル、エドワードのために用意した食事、エドワードのために用意したおやつ・・・などなど、エドワードを猫可愛がりしたかったのに、上司権限でブラッドレイに邪魔された

ロイは、それはそれはぶすくれた顔で明朝迎えに来る事を言い置き、自宅に帰っていった。

「・・・ふふふふふふふ。ヒトの嫉妬は醜いが、それをさせているのが俺様だというのは心地良いなぁ」

うわっはっはっは。

人間としてどうよ・・・な発言ではあるが、それはそれ。

エドワードも目的を果たすため、仕方なくやっているんだから、大目にみてあげてくださいな。

「ククク。国中の者どもよ、俺様のために尽くせ!」

えーと、・・・大目にではなく、遠目で見た方がいいです。

 

文献を次々と読破しながらフルーツだの焼き菓子だのをどんどんと平らげ、5人前を軽く超えた辺りで、漸くエドワードは身を起こした。

軽く張っているお腹をぽんと叩き、

「腹八分目でやめとくかー」

肥満に悩む女性すべてを敵に回す男、エドワード・エルリック。

目指すはゴージャスなバスルーム。

書くだけでむかつくので入浴シーンはさくっと削る・・・。

上気して良い感じに色っぽくなった己の姿(マッパ)を鏡に映してポーズを取ってニヤッと笑い、脱いだ服をランドリーボックに放り込んだ。

こうしておけば、翌日従業員が回収してクリーニングして持ってきてくれるのだ。(有料だが、払うのはブラッドレイ)

小悪魔な女の敵は何を思ったか、突如マッパのまま備え付けのドレッサーの引き出しを物色し始めた。

「お♪あったあった☆」

ゴージャスな雰囲気に相応しい、ゴージャスなガラス瓶がいくつかエドワードの手によって取り出される。

これは所謂アメニティというやつだ。

拭き取り用化粧水、保湿用化粧水、乳液、美容液、クレンジング、パックetc。

普通のホテルのアメニティといえばもっとチープな・・・小さいプラスチック製の容器だったり、アルミパウチのものだったりするのだが、ここはゴージャスなホテルのゴージャスなVIPルーム。

当然、アメニティは全部『ブランド物(でも肌に優しい)』『現品サイズ』『現品は高いけどタダ』『持ち帰り自由』である。

エドワードは文献を読む時よりも難しい顔で容器に書かれた用法容量を読み、おもむろに拭き取り用化粧水の蓋を開け、くんくんと匂いを嗅いだ。

「・・・・むぅ」

眉間に皺が寄る。

エドワードがこれまでに経験した事のないような、摩訶不思議な匂いである。それでも自然派で有名なブランドなので、そんなにも香料はきつくない。

これならなんとかいけるだろう、と決意を固める。

いつまでもマッパなままでは一部の腐女子のヒトが喜ぶだけなので、サイズぴったりの(恐らく子供用と思われる)バスローブを羽織ってアメニティ一式に戦いを挑んだ。

拭き取り用化粧水をコットンに取り、肌の上を滑らせるように優しくゆっくりと肌の汚れを拭き取っていく。続いて化粧水で肌を整えた後、美白効果のあるパックを目と口を覗いた顔全体に伸ばしていった。

「笑っちゃ駄目なんだよなー」

パックをしている時に笑ったり表情を動かすと、下手をすれば肌に皺が出来る。活発なエドワードには少々辛いが、これも未来のため。

我慢するしかない。

パックが乾くまで10分ほど時間がかかるとあったので、エドワードは暫く考えて故郷に電話を入れようと思い立った。(口を動かしても駄目よ〜)

ゴージャスな部屋に相応しいゴージャスな電話機は、ベッドの横にあった。

エドワードはシルク張りのベッドに腰を下ろして受話器を取ると、ばっと足を組んだ。

滑らかな光沢の美脚(右足だけ)がバスローブのあわせから惜しげもなく晒される。タオルの巻かれた髪。そこから幾筋か白い首筋を流れる金の後れ毛。上気した頬。

バスローブから見え隠れする、日に焼けていないミルク色の肌。

右腕と左足の機械鎧が、かえってエドワードの魅力を引き出しているかのようにほ誇らしげに鈍く光っていた。

コール音を聞きながら、受話器のコードを指先にくるくると巻き付け、気分はさながらハリ○ッド女優。(パック中ですぜ、少年)

ちろっとゴージャスな鏡を見る。

風呂上がりの気怠げな美少女ばりの美少年が、妖しい雰囲気を醸し出してこちらを見つめていた。(だからパック中だってば!)

「俺って・・・最高♪」

 

やがて受話器を通して聞こえてきた幼馴染みの声に、エドワードは会心の笑みをたたえた。

「やべ!パック中だったのに笑っちまった!皺になっちまうよ〜」

現実を思い出したパック中の小悪魔は、受話器を放り投げてパックを落とすべく、洗面所の駆け込んだ。

開口一番謎発言をかまして通話を切ったエドワードに、ウィンリィは怒るよりも大層不思議がったとか。

『パック中・・・?皺・・・?』

 

続く。

 

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